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Komorebi

カテゴリー: Journal

  • 千年もつ紙、和紙のはなし

    いまも損なわれずに残っている世界最古の紙の文書は、日本のもので、702年にさかのぼります。それは和紙に書かれていて、1980年ごろの多くの紙よりも、むしろよい状態を保っています。

    和紙とは、文字どおりには日本の紙のこと。けれどもこの言葉は、ある特定の紙を指すようになりました。楮(こうぞ)・三椏(みつまた)・雁皮(がんぴ)の内皮を原料に、冷たい水のなかで竹の簀(す)を使って一枚ずつ手で漉き、天日で乾かした紙です。繊維が長いから丈夫で、酸も塩素も木材パルプも使わない製法だから長持ちします。

    冬の仕事

    私たちのレターセットのふるさと、岐阜の美濃では、紙漉きは昔から冬の仕事です。楮は12月に刈り取り、蒸して皮をはぎます。その皮を川の水にさらし、黒い外皮をきれいに削り落としたら、木灰で煮て、手で叩いてやわらかな紙料にします。水が冷たいことには意味があります。繊維が自然に傷んでいくのを遅らせ、職人が一枚一枚を漉くための時間を稼いでくれるのです。

    漉く作業そのものは数秒、けれどその技には一生がかかります。職人は、紙料と水にトロロアオイの根からとった粘りのある液、ねりを加えた漉き舟に竹の簀を沈めます。ねりが繊維を水中に漂わせ、簀を前後に揺らすことで、繊維があらゆる方向に絡み合っていきます。美濃の技法である流し漉きでは、余分な水をひと振りで簀の向こう側へ捨てます。うまくいけば、何事もなかったかのように見える。しくじれば、紙の片側だけが厚くなってしまいます。

    手ざわりが違う理由

    美濃和紙を一枚、窓にかざしてみてください。繊維がやわらかな雲のように重なり合っているのが見えます。表面はつるりとしているのではなく、ほんのりとした凹凸があって温かみがあります。繊維がインクを横ににじませず均一に吸いこむので、万年筆もほとんどにじまずにすべるように走ります。裁ち落とさずに残した縁は、紙料が枠ぎわで薄くなったところが、やわらかく不揃いな表情になっています。

    2014年、美濃の手漉き和紙は、石州・細川とともにユネスコの無形文化遺産に登録されました。いま町に残る専業の紙漉き職人は、12人にも満たなくなりました。私たちのレターセットは、そのうちの一組、60代のご夫婦から仕入れています。最近、娘さんが弟子入りしたばかり。この先に、希望を感じています。

  • おうちで気軽に、抹茶を点てる

    茶室も着物も、一年がかりのお稽古もいりません。必要なのは、茶碗と茶筅、70 °Cのお湯、そして2分ほどの時間だけです。

    抹茶にはむずかしそうな印象がありますが、それはもったいないことです。ふだん飲む抹茶は、じつはとてもシンプルな飲みものなのですから。茶道は美しいものですが、それはまた別のお話。ここでは、私たちが平日の朝に抹茶を点てるときのやり方をご紹介します。

    用意するもの

    • 抹茶 そのまま飲むなら点前用(セレモニアルグレード)を。ラテにするなら製菓・料理用でも十分です。開封後は冷蔵庫で保存してください。
    • 茶碗 口の広い器ならなんでもかまいません。ちゃんとした茶碗があれば、茶筅を振るゆとりが生まれるので、より点てやすくなります。
    • 竹の茶筅 買う価値のある道具をひとつ挙げるなら、これです。いざというときはミルクフォーマーでも代用できますが、フォークでは無理です。
    • 小さな茶こし なくてもかまいませんが、いちばん効果の大きいひと手間です。ふるった抹茶はダマになりません。

    点て方

    1. 茶碗にお湯を注いでくるりと回し、温めてから捨てます。そのお湯に茶筅をしばらく浸して、穂先をやわらかくしておきます。
    2. 抹茶2グラムを茶こしでふるいながら茶碗に入れます。茶杓に山盛り1杯、小さじなら半分ほどです。
    3. 70〜80 °Cのお湯を70 ml注ぎます。沸騰したお湯では苦くなります。温度計がなければ、やかんで沸かしてから2分待ちましょう。
    4. 手首を使って、WやMを描くように15〜20秒、すばやく茶筅を振ります。茶筅は茶碗の底につけないように。きめ細かく均一な泡が立てば完成です。
    5. 泡の中心から、茶筅をゆっくりと引き上げます。1〜2分のうちに飲みましょう。抹茶は茶葉を浸出させたものではなく、粉が湯に浮かんでいる状態なので、時間がたつと沈んでしまいます。

    よくある三つのまちがい

    お湯が多すぎる ふだん飲む薄茶は、わずか70 mlほどです。マグカップ1杯分つくりたいなら、必要なのは抹茶を増やすことで、長く点てることではありません。

    古い抹茶 抹茶は開封から数週間で酸化します。缶を開けて半年たち、色が茶色っぽくなっているなら、干し草のような味がするのはそのせいです。小さな缶を選び、早めに使いきりましょう。

    円を描いて混ぜる 円を描いてもお茶が回るだけ。空気を含ませるのは、前後に往復させる動きです。最初の一週間は違和感がありますが、すぐに慣れます。

    Komorebiのスターターセットには、ここに挙げた道具がすべてそろっていて、手順を書いたカードも付いています。宇治の抹茶は、私たち自身がふだん飲んでいるものです。

  • 波佐見の窯元で過ごした朝

    長崎の山あいにある人口およそ14,000人の町、波佐見。この町は400年にわたり、ほかの誰かのために磁器をつくり続けてきました。9月のはじめ、その波佐見で朝のひとときを過ごしてきました。

    まず目に入るのは煙突です。レンガ造りの四角い煙突が何十本も、田んぼと低い木造家屋のあいだから谷にそびえています。そのほとんどはもう使われていません。煙突がつながっていた登り窯は、1960年代にガス窯や電気窯へと置き換わりました。それでも煙突はいまも残り、町はいまもそれを囲むようにして成り立っています。

    波佐見の歩みは少し変わっています。藩主やヨーロッパの宮廷のために磁器を焼いた名高い隣町・有田とは違い、波佐見がつくってきたのは一般の家庭のための器でした。17世紀以降、日本じゅうで安く売られた素朴な飯碗や酒杯、いわゆるくらわんかです。波佐見は事実上、日常の焼きものを大量につくった日本で最初の産地であり、役に立つものをつくるという感覚は、いまも少しも失われていません。

    分業という仕組み

    いちばん驚いたのは、仕事の分け方でした。波佐見では、石膏の型をつくる工房、生地を鋳込む工房、釉薬をかけて焼成する工房、仕上げと出荷を担う工房がそれぞれ別にあります。ひとつのマグカップが、箱に収まるまでに四つの家業を渡り歩くこともあるのです。品質をそろえるための仕組みであり、波佐見焼がいつも薄く、むらがなく、きれいに仕上がっている理由もここにあります。

    訪ねた窯元では、窯主のお母さんが小さな刃物で、ひと揃いのマグカップの釉薬をかけない口縁を削っていました。8秒ほどにひとつのペースです。口縁を素地のまま残すのは、釉薬をかけると角が丸くなり、すっきりとした線が失われてしまうからだと話してくれました。「どこかで土を感じられたほうがいいのよ」と。

    私たちがこの器を選ぶ理由

    Komorebiで扱っているマグカップは、まさに彼女が削っていたものです。珍しいものでも、高価なものでもありません。ただ、とてもよくできている。たいていの国の歴史よりも長いあいだ、よくできた食器のことだけを考え続けてきた土地でつくられた器です。Komorebiが届けたいのは、そういう道具です。